DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第3回|PayPayとAlipayは何が違う?国民的アプリの裏側

DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第3回|PayPayとAlipayは何が違う?国民的アプリの裏側

QRコード決済アプリの代表格として知られるPayPayとAlipay。しかし、その成り立ちと設計思想には、大きな違いがあるようです。

1.モバイルウォレットの進化:決済から生活インフラへ

モバイルウォレットとは、スマートフォンを使って支払いを行うだけでなく、ポイント管理やクーポン利用、公共料金支払い、送金など多様な機能を備えたアプリのことを指します。かつては「電子マネーを使う財布」のような役割でしたが、現在ではその位置づけは大きく変化しています。生活の中で何度もアクセスされるアプリであることを活かし、情報接点・信用スコア・生活支援まで巻き込む“経済圏の起点”へと進化しているのです。加えて、スマートフォンの普及によりユーザーのライフスタイルがモバイル中心に移行したことで、ウォレットアプリの機能拡張は単なる利便性向上にとどまらず、顧客との継続的接点を構築する重要な基盤となっています。

2.PayPayとAlipayの違い:思想とスケールの違い

PayPayは日本市場を前提とした「買い物に強いアプリ」です。通信会社・ポータルサイト・SNSなどの既存サービス群と連携し、キャンペーンやクーポン、ポイントを駆使して“日常の決済習慣”に入り込んでいます。一方、Alipayは中国において、単なる支払い手段ではなく、医療予約や保険加入、社会信用スコア(芝麻信用)などを統合した“生活のOS”のような存在となっています。両者ともQRコード決済を軸にしていますが、Alipayは国家スケールでの行政連携まで含んでおり、思想と展開領域の広さが大きく異なります。また、Alipayは巨大プラットフォーム内でユーザーのあらゆる経済行動を一元管理する設計となっており、公共サービスや銀行との連携面でも先進的な取り組みが際立っています。

3.選ばれるのは「機能」ではなく「接点」

モバイルウォレットの競争は、単なる決済機能の優劣では決まりません。重要なのは、ユーザーの生活にどれだけ自然に溶け込んでいるか──つまり「日常的な接点」をどれだけ確保できるかという点です。PayPayが「自治体キャンペーンとの連携」や「LINEとの統合」で生活圏に入り込んでいるように、今後の鍵は“単機能”から“複合接点”への移行にあります。そのため、ウォレットアプリを単なる決済ツールではなく、データを蓄積・活用できる“CRM機能”として位置づける視点がますます重要になっています。これは中小企業にとっても、マーケティングと顧客維持に直結する可能性を秘めています。

DCMでは、モバイルウォレットのご相談だけでなく、経済圏全体の設計視点から、中小企業や自治体のペイメント戦略をサポートしています。生活インフラとして重要なキャッシュレス。「今さら聞けないキャッシュレス/ペイメントビジネス」について学びたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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次回は、クレジットカードに代わる決済手段として注目される“カードレス与信”について解説します。信用スコアやBNPLと連動する、新たな信用モデルの潮流を読み解きます。

2025年5月1日