カードを持たずに“信用”で支払うとはどういうことか。本稿では、分割払いと与信の未来を読み解くお話です。
1.カードを使わない「与信」の広がり

これまで「与信」といえば、クレジットカードによる事前審査と限度額設定が当たり前でした。職業・年収・勤続年数などの属性情報に基づき、カード会社が利用枠を決定するという構図です。
しかし近年は、スマートフォン一台で即時に信用判断を行い、分割払いや後払いが可能になる新しい与信の形が広がりつつあります。代表例がBNPL(Buy Now, Pay Later)や、チャージ不要のモバイル後払い機能です。
これらの特徴は、金融機関を介さず、決済事業者やECプラットフォームが独自に与信を提供する点にあります。特に、従来の金融インフラでは取りこぼされがちだった若年層やフリーランス層にも利用が広がり、新たな金融アクセスの入口として機能し始めています。
2.信用スコアは「消費行動」で決まる
従来、信用の判断材料は「属性情報」が中心でしたが、いま注目されているのは信用スコアです。これは、支払い履歴・購買行動・アプリの利用傾向・SNSの行動パターンなど、日々の行動をもとにAIがスコアを算出し、個人の信用力を可視化する仕組みです。
中国の芝麻信用(ジーマ・クレジット)や米国のFICOスコア、日本のPaidyスコアなどがその代表例です。
信用スコアは、単なる“利用可否の判断”にとどまらず、優良顧客の抽出、特典提供、レコメンド施策などにも活用されるようになっており、マーケティングと金融の融合領域としても急速に進化しています。
つまり信用スコアは、決済手段というよりも、経済圏のエンジンとして重要な位置を占めつつあるのです。

3.金融インフラの民主化とそのリスク
カードレス与信や信用スコアの広がりは、金融インフラの民主化という点で歓迎すべき潮流です。銀行口座やクレジットカードを持たない層が、ECや各種サービスへアクセスできるようになることは、包摂的な経済社会の実現にもつながります。
一方で、過剰与信、アルゴリズムへの過信、個人情報の取扱いといった新たなリスクも顕在化しています。
たとえば、スコアの算出ロジックが不透明な場合、「なぜ自分は不合格なのか」がわからず、ユーザーの不信感につながる可能性もあります。さらに、スコアに基づく差別的な取扱いや、情報管理における倫理的課題も今後の論点となるでしょう。
この仕組みの信頼性を支えるのは、透明性・説明責任・情報リテラシーの3点です。信用がデータに基づいて構築される時代だからこそ、人と仕組みの“信頼”をどうつくるかが問われています。
DCMからのご案内
DCMでは、与信・信用スコアといった「信用の仕組み」を、単なる審査ではなく、売上と経済圏を広げるビジネス資源として捉えています。
キャッシュレス社会への移行やペイメント活用のあり方を検討中の企業・自治体の皆さま、ぜひDCMまでご相談ください。
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次回は、「サブスクリプション決済」をテーマにお届けします。
“都度払い”から“継続支払い”へ──決済がどう体験価値の一部となっていくのか、その変化を読み解きます。
2025年5月16日