DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第1回【フィンテックの基礎転換】|「銀行なき銀行」時代の始まり ─ 決済はどこへ向かうのか?

DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第1回【フィンテックの基礎転換】|「銀行なき銀行」時代の始まり ─ 決済はどこへ向かうのか?

「銀行」を通さない金融サービスが広がる中、決済インフラの主役は誰に移るのか?

1.決済の再定義:銀行を介さないペイメントインフラ

近年、フィンテック(金融技術)の急速な進化は、従来の「銀行」という存在意義を根底から問い直しています。かつて銀行は、預金、送金、与信といった主要な金融サービスの提供を一手に担ってきましたが、いまやこれらの機能を代替する革新的なサービスが次々と登場しています。

スマートフォンアプリを通じて、場所や時間を問わずに口座開設や残高照会、送金が可能となり、さらにはクレジットカードを介さずに分割払いを実現するBNPL(Buy Now, Pay Later)の普及も進んでいます。これらの変化は、「銀行を通さずに構築される決済インフラ」の時代の到来を象徴しています。

2.代表企業:Revolut、Wise、PayPay、メルペイの思想の違い

この潮流をリードするのが、銀行の枠組みを超えて金融サービスを再定義している新興企業群です。

たとえば、イギリス発のRevolutは、多通貨対応のモバイルバンクとして急成長し、手数料の透明性と利便性で高い支持を得ています。Wise(旧TransferWise)は、銀行を介さない国際送金を可能にする独自ネットワークにより、高速かつ低コストな送金手段として注目されています。

日本においては、PayPayやメルペイが「生活インフラ型アプリ」として台頭。決済機能だけでなく、ポイントやクーポンの統合により日常接点を拡張しています。

さらに、暗号資産取引所のCoinbase、P2Pレンディングのクラウドクレジットなども含め、これらのプレイヤーに共通するのは、「従来の銀行機能をテクノロジーで代替し、直接ユーザーとつながる」という発想です。

3.参入の論理:「決済に来る」異業種の本音とは?

近年、通信、EC、鉄道、流通といった異業種の企業が、相次いで決済領域に参入しています。その目的は、単なる決済サービスの提供ではありません。最大の狙いは「ユーザーデータの取得」と「自社経済圏の拡張」にあります。

つまり、決済は“支払いの手段”から“事業戦略の中核”へと進化しています。購買後の行動データや来店動線、キャンペーン効果など、決済にひもづく情報は、顧客接点の最前線としてきわめて重要な意味を持ち始めているのです。

DCMからのご案内

DCMでは、このような市場構造の変化を正確に読み解き、企業や自治体の皆さまに向けて「実行可能なペイメント戦略設計図」の策定を支援しています。

行政・事業者・生活者をつなぐ俯瞰的な視点から、経済圏の可視化や導線設計に取り組んでいます。決済を軸にした事業転換をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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次回は、クレジットカードに依存しない新しい与信の形「BNPL(後払い決済)」を特集。
その可能性とリスクを、国内外の事例を交えて読み解いていきます。

2025年4月1日