これまで“行政サービス”と“キャッシュレス”は、別々の領域として捉えられてきました。しかし今、国と自治体が進めるマイナンバー×マイナポータル×デジタル給付の取り組みにより、行政分野にもキャッシュレス化の波が本格的に押し寄せています。
今回は、官民連携によるキャッシュレス基盤の再構築について考えます。
1.マイナンバー制度とキャッシュレスの接点

マイナンバー制度は、本来「情報の一元管理」を目的として整備された仕組みです。従来は税や社会保障の手続きが中心でしたが、現在はマイナポータルとの連携を通じて、個人と行政をつなぐ“サービスハブ”へと進化しています。
特に注目されているのが、給付金の申請と受取のデジタル化です。
コロナ禍の特別定額給付金では、手続きや支給の遅れが問題となりましたが、マイナンバーと銀行口座の事前紐付けが進めば、申請不要・即時支給といった「プッシュ型給付」も可能になります。
このように、行政側の利便性だけでなく、住民の受け取り体験の向上という観点からも、キャッシュレスは重要な基盤になりつつあります。
2.官民連携の先行事例と課題
政府は現在、「公金受取口座登録制度」や「マイナポータル連携API」の整備を進め、銀行・フィンテック事業者との連携を加速させています。
たとえば、マイナポータルと連携した給付申請システムを導入する自治体では、住民はスマホから給付申請を完結でき、受取先も即時に指定できるようになっています。
また、事業者側では、電子申請から支払い、明細管理までを一体化したソリューションが登場しており、中小企業向け補助金の運用効率化にも寄与しています。
とはいえ、課題も残ります。
- 高齢者やデジタル困難層への配慮
- マイナンバーと金融情報の結びつけに対する心理的ハードル
- 自治体ごとの導入格差とシステム連携の不統一
これらを乗り越えるには、「制度」ではなく「体験」から設計する発想が求められます。

3.行政サービスのUXとしてのキャッシュレス
キャッシュレス化の本質は、単に紙や現金を減らすことではありません。
行政サービスにおいても、キャッシュレスは“接点の再設計”であり、情報とお金の流れを一体化することによって、住民サービス全体の質を引き上げる仕組みとなります。
たとえば、育児・介護・災害支援など、タイムリーなサポートが求められる分野では、迅速な給付と情報提供の連携が極めて重要です。そこにマイナポータルとキャッシュレス基盤が組み合わさることで、「困っている人に、必要なときに、確実に届ける」社会が実現可能になります。
今後は、行政と金融が密接につながる「行政×キャッシュレス×個人UI」という新たなサービス設計が必要となるでしょう。
DCMからのご案内
DCMでは、官民連携によるキャッシュレス施策の企画設計等、自治体・行政・民間企業を横断する“つなぎ役”としての支援活動を行っております。
「行政サービスにキャッシュレスを取り入れたい」
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次回は、「海外トレンド(東南アジア編)」をテーマにお届けします。
爆発的にキャッシュレスが普及した背景と、日本が学ぶべきスピード感・柔軟性について考察します。
2025/09/01
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