DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第13回【海外トレンド(欧米編)】|欧州が先行する「決済×ID統合」戦略のリアル

DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第13回【海外トレンド(欧米編)】|欧州が先行する「決済×ID統合」戦略のリアル

近年、キャッシュレス決済の分野では、「ID(本人認証)」との統合が世界的な潮流となっています。
なかでも欧州では、行政・金融・民間サービスが連携する形で決済とIDの一体化が急速に進行しており、その取り組みは日本の将来像を考えるうえでも多くの示唆を与えてくれます。
今回は、欧州を中心とした「決済×ID統合」の最新動向を解説します。

1.eIDと決済の統合が進む欧州

欧州では、電子ID(eID)を活用した本人確認の仕組みが広く普及しています。
たとえば、エストニアやフィンランド、デンマークなどでは、政府発行のeIDが、行政手続きだけでなく、銀行口座の開設、電子署名、医療情報の確認、さらにはキャッシュレス決済やサブスクリプション登録の本人確認にも使われています。

このように、eIDを起点にあらゆるサービスに“ログイン”できる仕組みが整備されており、「身分証=決済認証」という構図が一般化しつつあります。
とくに欧州連合(EU)は「European Digital Identity Wallet(デジタルIDウォレット)」構想を掲げ、各国のIDとサービスを共通化・相互接続するプロジェクトを進めています。

これは、単なる認証手段の話ではなく、IDと決済を統合した“デジタル市民インフラ”の構築という大きな流れの一部なのです。

2.セキュリティとUXの両立という発想

欧州の「決済×ID統合」が注目されるもう一つの理由は、セキュリティとユーザー体験(UX)の高度な両立にあります。

たとえば、PSD2(欧州決済サービス指令)に基づく「強固な本人確認(SCA)」の導入では、パスワードに加え、顔認証・指紋・生体情報などを組み合わせる多要素認証が義務付けられました。一見すると手間が増えるようにも思えますが、これにより決済時の詐欺被害は大幅に減少しています。

さらに、これらの仕組みはAPI連携によってシームレスに接続されており、ユーザーは1つのIDで公共料金の支払いからEC決済、納税までをワンストップで行える環境が整いつつあります。

日本では「セキュリティ強化=手間が増える」という発想が根強いですが、欧州の事例は、正しく設計すれば安全性と利便性は両立できることを示しています。

3.日本への示唆:「身元保証」から「生活導線」へ

日本でもマイナンバーカードの普及が進む中で、決済や行政サービスとIDをどう統合していくかが大きな課題となっています。
しかしながら、現時点では「本人確認書類」としての利用にとどまり、IDが“生活の導線”として機能しているとは言い難い状況です。

欧州の事例から学べるのは、「ID=管理のためのもの」ではなく、「ID=ユーザーがサービスをスムーズに利用するための入口」として捉える視点です。
決済の手間を省き、行政手続きを簡素化し、購買や移動の履歴をもとにパーソナライズされた提案を行う。そんな“使われるID”設計が、今後の日本にも求められる方向性といえるでしょう。

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次回は、「暗号資産・ステーブルコイン決済」をテーマにお届けします。
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2025/10/1

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