DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第17回【決済におけるセキュリティ】|不正と戦う決済技術 ─ セキュリティは信頼の入口

DCMコラム『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』 第17回【決済におけるセキュリティ】|不正と戦う決済技術 ─ セキュリティは信頼の入口

キャッシュレスの世界では、「便利さ」と「安全性」は常に表裏一体です。
決済はお金そのものだけでなく、顧客情報・行動履歴・事業者の信用までも背負っています。
今回は、決済におけるセキュリティを「コスト」ではなく、「信頼の入口」として捉え直してみたいと思います。

1.決済不正のいま:何が狙われているのか?

決済を取り巻く脅威は年々高度化・多様化しています。

  • フィッシング・なりすまし
  • カード情報の盗用(スキミング/ECサイト改ざん)
  • アカウント乗っ取り(ID・パスワード流出)
  • 不正アプリ・偽サイトを使った情報搾取

特にオンライン決済では、「カード実物が手元にない取引(CNP:Card Not Present)」が主戦場になっており、
ID・パスワード・カード番号だけに依存した防御はもはや限界を迎えています。

こうした中で重要になるのは、

「情報を持たせない」「持っても読めない」「怪しい動きはすぐ止める」という3つの発想です。

2.不正と戦う技術:トークナイゼーションと多要素認証

近年の決済セキュリティは、個々の技術ではなく「組み合わせ」で力を発揮します。

  • トークナイゼーション
    カード番号そのものを保存せず、
    ・店舗側には「代替番号(トークン)」だけを渡す
    ・万一漏洩しても、他では使えない
    という仕組みです。Apple PayやGoogle Payもこの考え方に立っています。
  • エンドツーエンド暗号化/P2PE
    端末で読み取った時点から決済センターまで、
    データを常に暗号化したまま運ぶことで、「途中で盗まれても読めない」状態を保ちます。
  • 多要素・リスクベース認証(例:3Dセキュア2.0)」
    IDとパスワードだけでなく、
    ・端末情報
    ・位置情報
    ・過去の取引パターン
    を組み合わせ、「いつもと違う」取引だけワンタイムパスなどで追加確認します。
    これにより、安全な取引はスムーズに、不正の疑いがある取引だけを厳しくすることが可能になります。

3.“ガチガチに固める”だけでは続かない

とはいえ、セキュリティを厳しくし過ぎると、
・決済が通りにくい
・認証が面倒
・顧客が離脱する
という逆効果も生まれてしまいます。

重要なのは、

  • どのリスクをどのレベルで許容するか(リスク評価)
  • どこまでを技術で、どこからをルール・運用でカバーするか
  • 従業員教育・加盟店教育をどう行うか

といった「設計と運用のバランス」を経営判断として位置づけることです。
セキュリティは情報システム部門だけのテーマではなく、「顧客に安心して決済してもらうための、事業戦略の一部」と捉える視点が求められます。

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次回は、いよいよ最終回として、
第18回「キャッシュレス2025 → 2030年の勝者と敗者を読む」をお届けします。
これまでの連載で見てきたトレンドを総括し、「どのプレイヤーが、どの戦略で生き残り、何が淘汰されていくのか」── キャッシュレス新時代の行方を展望していきます。

2025/12/1

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