キャッシュレスの世界では、「便利さ」と「安全性」は常に表裏一体です。
決済はお金そのものだけでなく、顧客情報・行動履歴・事業者の信用までも背負っています。
今回は、決済におけるセキュリティを「コスト」ではなく、「信頼の入口」として捉え直してみたいと思います。
1.決済不正のいま:何が狙われているのか?

決済を取り巻く脅威は年々高度化・多様化しています。
- フィッシング・なりすまし
- カード情報の盗用(スキミング/ECサイト改ざん)
- アカウント乗っ取り(ID・パスワード流出)
- 不正アプリ・偽サイトを使った情報搾取
特にオンライン決済では、「カード実物が手元にない取引(CNP:Card Not Present)」が主戦場になっており、
ID・パスワード・カード番号だけに依存した防御はもはや限界を迎えています。
こうした中で重要になるのは、
「情報を持たせない」「持っても読めない」「怪しい動きはすぐ止める」という3つの発想です。
2.不正と戦う技術:トークナイゼーションと多要素認証
近年の決済セキュリティは、個々の技術ではなく「組み合わせ」で力を発揮します。
- トークナイゼーション
カード番号そのものを保存せず、
・店舗側には「代替番号(トークン)」だけを渡す
・万一漏洩しても、他では使えない
という仕組みです。Apple PayやGoogle Payもこの考え方に立っています。 - エンドツーエンド暗号化/P2PE
端末で読み取った時点から決済センターまで、
データを常に暗号化したまま運ぶことで、「途中で盗まれても読めない」状態を保ちます。 - 多要素・リスクベース認証(例:3Dセキュア2.0)」
IDとパスワードだけでなく、
・端末情報
・位置情報
・過去の取引パターン
を組み合わせ、「いつもと違う」取引だけワンタイムパスなどで追加確認します。
これにより、安全な取引はスムーズに、不正の疑いがある取引だけを厳しくすることが可能になります。

3.“ガチガチに固める”だけでは続かない
とはいえ、セキュリティを厳しくし過ぎると、
・決済が通りにくい
・認証が面倒
・顧客が離脱する
という逆効果も生まれてしまいます。
重要なのは、
- どのリスクをどのレベルで許容するか(リスク評価)
- どこまでを技術で、どこからをルール・運用でカバーするか
- 従業員教育・加盟店教育をどう行うか
といった「設計と運用のバランス」を経営判断として位置づけることです。
セキュリティは情報システム部門だけのテーマではなく、「顧客に安心して決済してもらうための、事業戦略の一部」と捉える視点が求められます。
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次回は、いよいよ最終回として、
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2025/12/1
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