本連載では、銀行なき銀行、BNPL、モバイルウォレット、サブスク、POS、ECプラットフォーム、スーパーアプリ、行政キャッシュレス、海外トレンド、セキュリティまで、キャッシュレスを多面的に見てきました。
最終回となる今回は、その流れを踏まえつつ、2025年から2030年にかけて「何が伸び、何が沈むのか」を整理してみたいと思います。
1.2025→2030年、キャッシュレス市場で「確実に起こること」

まず、この数年でほぼ確実に進むであろう変化を整理します。
現金は「ゼロ」にはならないが、“主役”からは退く
・日常の小口決済は、今以上にコード決済・タッチ決済・ウォレットへシフトするでしょう。
・現金は「備え」「習慣」のために残りますが、ボリュームゾーンではなくなっていきます。
決済は“単体ビジネス”から“経済圏のインフラ”へ
・手数料そのものよりも、「決済データを起点としたCRM・金融・広告」が収益源になっていくでしょう。
・決済だけを提供するプレイヤーより、“決済+何か”を持つプレイヤーが優位になります。
規制・ID・セキュリティが、成長の前提条件になる
・マイナンバー、デジタルID、強固な本人確認が「やっていて当たり前」の世界になるでしょう。
・セキュリティとUXの両立ができないサービスは、便利でも「選ばれなくなる」可能性が高いです。
2.勝者となるプレイヤー・戦略とは?
2030年に向けて「勝ち筋」が見えつつあるのは、次のようなプレイヤー・戦略です。
①経済圏を持つプラットフォーマー
・楽天、LINEヤフー、メルカリなど、EC・コンテンツ・金融・ポイントを束ねられる事業者は強みを維持しやすいと考えられます。
・決済はあくまで“入り口”であり、「使い続けてもらう文脈」をどれだけ設計できるかが鍵になります。
②リアル×デジタルの橋渡しが上手いプレイヤー
・Squareや国内のmPOS・POS連携事業者のように、中小店舗のDX・経営改善まで踏み込むモデルは、支持を広げる可能性が高いです。
・「レジを売る」のではなく、「売上改善の仕組み」を提供できるかどうかが分かれ目です。
③行政・地域と組めるプレイヤー
・デジタル給付、地域通貨、観光・交通との連携など、官民連携のフィールドは今後も広がります。
・ここでは“スピード”だけでなく、「住民目線での信頼設計」ができるプレイヤーが評価されます。
勝者は、「単一の決済サービスが最も優れているところ」ではなく、“生活・事業・行政”それぞれの文脈に、決済を溶け込ませられるプレイヤーであると考えます。

3.沈みがちなプレイヤー/これから問われる視点
逆に、このままでは厳しくなると考えられるのは、次のようなパターンです。
- 「決済だけ」で差別化しようとする事業者
・手数料や端末価格だけの勝負は、長期的には消耗戦になりがちです。
・“決済以外の価値”(データ活用、集客、与信、業務効率化など)を持てるかが生死を分けるでしょう。 - 規制・セキュリティへの対応を後回しにするプレイヤー
・不正や情報漏洩は、一度の事故でブランドを大きく傷つけます。
・「とりあえず動くサービス」から「安心して預けられる基盤」への格上げができないと、大手との協業や行政案件から外されるリスクが高まります。 - UXを軽視するプレイヤー
・機能は豊富でも「わかりにくい」「面倒くさい」サービスは、徐々に使われなくなります。
・特に高齢者・外国人・デジタルに不慣れな層も視野に入れた“包摂的な設計”が求められます。
2030年に「勝者」とされるのは、
技術・ビジネスモデル・規制対応・UXをバランス良く組み合わせたプレイヤーです。
どこか1つだけ突出していても、残りの要素が追いつかなければ、長期的な信頼は得られません。
DCMからのご案内と、連載を終えるにあたって
DCMでは、本連載で扱ってきたような視点──
- 決済を「単なる支払い」ではなく「売る仕組み」「経済圏」「行政サービスの基盤」として捉えること
- 海外トレンドや規制動向を踏まえつつ、日本の現場に落とし込む設計を行うこと
を軸に、企業・自治体・地域事業者の皆さまのペイメント戦略を支援しています。
「自社のキャッシュレス戦略を見直したい」
「地域や業界全体を巻き込んだスキームを考えたい」
といったご相談があれば、ぜひお声がけください。
📩 お問い合わせ:info@dcmjapan.com
全18回にわたる『キャッシュレス新時代の潮流と戦略』をお読みいただき、ありがとうございました。
キャッシュレスは、これからの5年で、さらに「生活と産業のインフラ」としての位置づけを強めていくでしょう。
この連載が、みなさまの事業や地域づくりにおいて、「決済をどう活かすか?」を考える一助になりましたら幸いです。
2025/12/16
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